国立劇場 11時半開演 三階席
前進座五月国立劇場公演
一、七代目嵐芳三郎襲名口上
二、処女翫浮名横櫛 切られお富
嵐広也改め七代目嵐芳三郎襲名を兼ねた公演。
新・芳三郎さんは最近ですと、大河ドラマ「功名が辻」での
熱い福島正則を思い出されます。
前進座舞台でも若手として華を添えています。
国太郎さんに矢之輔さんそして芳三郎さんを主として
梅之助さんや圭史さんは脇に回る。
「口上」は梅之助さんを中心に、圭史さん、矢之輔さん、
国太郎さんそして新・芳三郎さんで。
梅之助さんの女房役だった先代芳三郎さんの思い出と
その息子である国太郎と新・芳三郎のことなど語る
梅之助さんは、テレビでの伝七捕物帳や遠山の金さんでの
張りのあるお声に元気な姿がイメージあるため、あまりの
老け具合に驚かされた。でも、松竹歌舞伎の役者にも少ない
いるだけですごい貫禄を見せ付けられる。
圭史さんは先代は兄で、先々代の父や先先々代の祖父
などの話をされる。矢之輔さんは先代は自分の仲人、
座の経営などもされていたなど話される。
来年は創立80周年で、その足がかり的な興行と
梅之助さんは締められた。
前進座での口上は初めて見たので貴重な機会でした。
「切られお富」は、先代国太郎さん(俳優故松山英太郎さん、
松山政路さんの父)の十八番。それを当代が挑戦する。
お富は赤間(梅之助)の妾でありながら、昔契った与三郎
(芳三郎)が忘れられず、偶然再会した与三郎と密会をするが、
お富に惚れていた安蔵のちの蝙蝠安(矢之輔)が赤間に
告げ口をする。怒った赤間はお富をなぶり切りにする。
安蔵に助けられたお富は安蔵の妻になる。再び与三郎に
再会しお富が与三郎の家に恩あることを知り、家の重宝詮議の
ためお金を用立てよう
とかつての赤間を訪ねる。ゆすり取ったお金を安蔵に
せしめられたお富は安蔵を殺し与三郎の役に立つが殺しを
悔い身を引く。
松竹歌舞伎だと与三郎との再会から始まり、お富は既に
切られた後からで、お富がなぶり切りにされるところは始めて
見ました。
お富にも大家の主人と偽り、実は盗人という赤間源左衛門が
嫉妬し、自分や子分にお富の体を切りまくるところは黙阿弥と
いうより南北っぽい。またお富に惚れている安蔵がつづらに
入れて運ぶところはだんまりになり、与三郎や子分が絡む。
松竹歌舞伎と違い、立ち回りなどゆったりしていておおらか、
だんまりと大げさにせず自然に絡んでいったり…と見ていて
前進座の歌舞伎はかつてあった歌舞伎に一つの姿かもしれ
ない。
やはり梅之助さんの赤間が黙阿弥の世界の人。
赤間という悪党ながら大家の主人の風情と、「おらあ、盗人だ」と
明かす…わかっていてもどこか意外性がある。姿から修羅場を
くぐってきた大きさや凄みがある。貴重な役者さんである。
国太郎さんのお富は、与三郎や安蔵への甘え上手なかわい
らしさがあり、ささやきやちょっとした仕草でつい男がニヤけて
しまうような現代的な雰囲気。忠義一途な女性ぶりを魅せる。
矢之輔さんの安蔵はふてぶてしく又愛嬌もあり芝居に重み
加える。
新・与三郎さんの与三郎は堅さはあるが健気な二枚目ぶり。
圭史さんは舟積になって捕物をされ脇に回る。梅之助さんとの
絡みもあって座の二枚看板をしっかり見せ付ける。
辰三郎さんの堅気なお滝、靖之介さんのお富の父である飄逸な
丈賀、安蔵に利用され殺されてしまう調子のいい松檮喜八郎さん
のみる杭の松など揃う。
来年80周年にはぜひ退団されたがゲストで梅雀さんも出てほしい。
お隣に組合活動されていた年配の方がお仲間と座られていて、
20年近くこの興行を見ていると話されていたり、仲代達矢さんの
ことや劇作家の三好十郎さんのことなど話されていて、こういう
老後っていいなあと思いました。
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